「北朝鮮レストラン」の実相(下)究極の「ブラック企業」

執筆者:西岡省二 2016年5月27日
エリア: アジア
北朝鮮との国境・中国遼寧省丹東(タントン)市にある北朝鮮レストランで歌う従業員女性たち(C)EPA=時事

 

 そんな環境でも、Zの女性たちは努力を怠らない。睡眠時間を削り、がむしゃらに音楽の技術を磨き、外国語を学ぶ。

 連日、客がいなくなる午後10時すぎから、音楽担当指導員について、約5時間、歌や楽器の練習に励む。「ここで頑張れば帰国した後、国家が良い待遇をしてくれる」。高麗ホテル側は女性たちにこう説いているという。

 加えて、毎週末には中国語の試験も課せられ、成績下位の5人には「茶碗洗い」の罰が待つ。たかが「茶碗洗い」。だが「平等にやってきたのに数人だけが脱落して『茶碗洗い』をさせられる。耐えられない不名誉なこと」。こう支配人が解説する。

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執筆者プロフィール
西岡省二(にしおかしょうじ) 毎日新聞外信部副部長。1965年3月、大阪市生れ。九州大学工学部卒。91年4月、毎日新聞入社。高知支局、大阪社会部、北京特派員、政治部、中国総局長などを経て、2017年4月から現職。大阪社会部時代には府警捜査4課(暴力団対策)を担当、90年代後半から北朝鮮情勢の取材に関わる。著書に『「音楽狂」の国 将軍様とそのミュージシャンたち』(小学館)=小学館ノンフィクション大賞最終候補作=がある。
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