安倍首相はかなり大きな「資源」を手に入れた(C)時事

 

 6月は日本の政治と経済運営の進路を決める分水嶺となる。伊勢志摩サミットとオバマ米大統領の広島訪問という政治イベントを成功させた安倍晋三首相は、今や追い風に恵まれている。消費再増税の再度の延期を、自らの政策の失敗ではなく、グローバルな課題達成のための責任と位置付けてみせた。

 伊勢志摩サミットとオバマ広島訪問を受けた各種世論調査では、安倍内閣の支持率は50%台半ばまで回復した。野党が決め手を欠くなか、首相は国政選挙を有利に展開するカードを手中にした。

 

歴代政権を潰してきた消費税

 消費再増税の時期は2017年4月から、2019年10月へとさらに2年半延期される。当初、再増税の時期は2015年10月だったから、都合4年の先送りである。安倍首相の決断は、あわよくば同日選と考えていた7月の参院選をにらんだものであることは、否定しようがない。この税はいくつもの政権を潰してきたからだ。ここに消費税という不幸な税の運命が凝縮されている。

 1979年の衆院選では、一般消費税を掲げた当時の大平正芳首相が大敗。自民党内の40日抗争を経て、1980年に行われた衆参の同日選のさなかに、大平首相は文字通り心臓病で逝去した。紆余曲折を経て1989年4月には消費税が施行されたが、それと引き換えに竹下登首相は退陣。後継の宇野宗佑首相は消費税、リクルート事件、自らの女性スキャンダルの矢面に立たされた。89年の参院選で自民党は大敗し、宇野首相も退陣した。

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