6月12日と13日に、米国とフランスでグローバル・ジハードの事例と見られる殺人事件が相次いだ。

これらの事件は、相互につながりが乏しいか、あるいは全くない、個人や組織がグローバル・ジハードの思想に感化され、自発的に呼応して行ったものと考えられる。2000年代半ばから世界各地で散発的に起こっており、「イスラーム国」のイラクとシリアでの台頭以後、頻発している。特に、フロリダ州オーランドでのゲイが集うナイトクラブの襲撃は、自発的な呼応による事件・現象の連鎖を主軸とする拡散のメカニズムが顕著だ。パリの警察幹部・家族の殺害事件は、過去にパキスタン・アフガニスタンへのジハード戦士勧誘で有罪判決を受けている人物が犯行を行ったとみられるため、直接なつながりが出てくる可能性は完全に否定はできないが、これもかなり自律的に、扇動に呼応して行った可能性が濃厚な事件である。

フォーサイトでの筆者の連載を熟読している読者の方には、それほど説明する必要がない、「繰り返し」の事象である。

まず過去の記事を紹介しておこう。理論的には、今回の事件について現時点で言うべきことは、これらの記事で既に書いてある。文中の「ボストン」や「サンベルナルディーノ」を「オーランド」に入れ替えて読んでみていただければいい。今回の事件については事実関係が明らかになるのを待ちながら考察を加えていきたい。

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