6月25日、エリゼ宮(フランス大統領官邸)でオランド大統領(左)、ヴァルス首相らと会談するルペン氏(右)(C)AFP=時事

 昨年来ヨーロッパだけでなく、世界の注目を集めてきた英国のEU(欧州連合)離脱をめぐる国民投票は、離脱派が勝利した。反EU派UKIP(イギリス独立党)のファラージ党首は、「独立した英国に夜明けが訪れた」と意気軒高ぶりを示した。今春以後の世論調査では、離脱派と残留派が拮抗したまま推移したが、今月16日、残留派のジョー・コックス議員が離脱派と思われる人物に殺害された事件が起こっても、残留派への投票は伸びなかった。

「熱」は伝染するか

 反EUとみなされているオランダの極右政党・自由党のウィルダース党首はやはり国民投票を望み、イタリア北部同盟のサルヴィニ代表は「今度は我々の番です」と高らかに宣言した。ドイツの反EU派「ドイツのための選択肢」ペトリ代表は、「もう1つのヨーロッパ、つまり諸国から成り立つヨーロッパ実現のための機は熟した」と語った。いずれもヨーロッパ最大の極右勢力フランス国民戦線(FN)の友邦党である。
 FNのマリーヌ・ルペン党首は、「フランスにはEU離脱のための理由は英国以上にあります。その理由はフランスはユーロ圏に属し、シェンゲン協定に加盟しているからです」と語った。FN は2013年以来、EUとユーロ圏にとどまるか否かについての国民投票実施を提唱している。6月にOpinion Wayが行った世論調査では、フランスのEU離脱(Frexit)支持者は26%に過ぎない。51%は残留組である。ルペン党首は来年の大統領選挙で勝利した暁には、「イギリスのように(国民投票を実施)する」と、念を押した。
 EU加盟各国には大きな衝撃が走った。前日までの予想で「残留派」の勝利と出ていたので、開票結果はブリュッセルの欧州委員会には激震だった。ユンカー委員長は「かつてない事態だ」とショックを隠さなかった。各国の中で最初に反応したのはラホイ・スペイン首相だった。同首相は「(混乱を回避して)冷静になろう」と呼びかけ、オランド仏大統領は「ヨーロッパを信頼する」と改めて団結を強調した。メルケル独首相は「混乱はヨーロッパの分裂を招く」と、やはり事態の鎮静化と冷静な対応を強調したが、各国首脳が一様に懸念するのは、EU離脱の熱が各国に「伝染」することだ。それはEUの崩壊につながるからである。オランド大統領は結果を受けた直後にメルケル首相に電話をし、対応策について週末協議することにした。月曜日には独仏伊の戦後欧州統合の発案国の会合を開催し、その後ベネルクス3国を含む1952年欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)設立の原加盟国6カ国中心に、今後の対応策を議論する。
 イギリスで「EU離脱」に投じた人々は、自分たちは「ヨーロッパ主義者」であることを強調する。決してヨーロッパとの協力に反対しているのではないのだ、と言いたいのである。むしろ彼らが反発するのはブリュッセル中心に進められる統合の態勢についての反発だ。イギリスの主権が侵されているという不満である。大英帝国を誇った国民的プライドでもある。そしてその先には統合の主導権を握る、独仏に対する反感もある。 

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