7月14日(米国時間)に米ケリー国務長官が訪露し、当日と翌日にかけて、プーチン大統領やラブロフ外相と会談して、シリア問題で妥協案を提示して米露協調を図る模様だ。ワシントン・ポスト紙の一連の報道によれば、会談では、世界各地でテロを扇動する「イスラーム国」だけでなく、シリア国内に活動が限定されアサド政権を標的としてきたヌスラ戦線に対しても、米露で情報を共有して空爆などの軍事作戦を協調して行う案を提示すると見られる。

ワシントン・ポスト紙は6月30日のスクープで、オバマ政権がロシアに対してこれまでの姿勢を転換して、アサド政権の強化につながる、対ヌスラ戦線の軍事行動での協力を申し出る提案を6月27日に提示したと伝えた。これについて協議が進んでいると報じられていたが、ケリーのモスクワ訪問が行われるということは、何らかの進展があったと予想するのが当然だろう。この問題を連続して報じているワシントン・ポスト紙のコラムニストのジョシュ・ローギンは、ロシアと米国が何を「テロリスト」とするかについて、ケリー国務長官の発言が最近変化していると指摘している。6月28日に米コロラド州アスペンで行われたアスペン・アイデアズ・フェスティバルの場で、ケリーは「テロリスト」に「イスラーム国」と共にヌスラ戦線を含めるだけでなく、ヌスラ戦線の一部として、アル=カーイダ系とはこれまで米国からはみなされておらず、シリア反体制派の中で有力な集団として、トルコやサウジアラビアなどから支援されてきた、「イスラーム軍(Jaysh al-Islam)」と「シャーム自由人(Ahrar al-Sham)」を含めていることにローギンは注目している。この2つの勢力は最近ヌスラ戦線との関係を深めているが、それが両勢力がアル=カーイダと一体化する危険性を意味するのか、ヌスラ戦線が「普通の」反政府勢力としての性質を強めるのか、判断の根拠は乏しいため様子見が続いていた。

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