米韓両国は7月8日、米軍の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」を在韓米軍に配備することを決定したと発表した。さらに韓国政府は同13日、THAADを韓国南部の慶尚北道星州の韓国空軍基地に配備すると発表した。韓国へのTHAAD配備決定は中国の強い反対を考慮し、当初は早くても秋以降とみられていた。だが、北朝鮮が6月22日に中距離弾道ミサイル「ムスダン」(射程約2500~4000キロ)の発射実験を成功させたことで一気に進行した。韓国政府は、時間を掛けても中国やロシアを説得できない状況で、北朝鮮の核・ミサイル脅威が明白になっているうちに早期に発表した方が得策という判断をしたとみられる。

中国は強く反発

 THAADの韓国配備決定に中国、ロシアは強く反発した。中ロ両国は、在韓米軍へのTHAAD配備は北朝鮮の脅威を理由にしているが、それは口実で、中国やロシアへの軍事的な対応であると受け止めている。中ロ両国は、THAADシステムに含まれるXバンドレーダーは中国東北部やロシア極東部をカバーすることができるとし、安保上の脅威とした。中国は、THAADシステムの米軍レーダーが米本土を射程に収める中国軍のミサイルを監視下に置くことを警戒している。
 習近平国家主席とプーチン大統領は6月23日タシケントで開催された上海協力機構に出席する中で首脳会談を持ち、さらに同25日に北京に移り再び首脳会談を開いた。両首脳は朝鮮半島へのTHAAD配備反対を盛り込んだ共同声明を2度も発表した。
 中国外務省は、韓国配備決定が発表された8日「強烈な不満と断固たる反対」を表明し、配備中止を求めた。中国外務省は「THAAD配備は朝鮮半島の非核化にプラスにならない上、中国を含めた各国の安全保障を著しく損なう」と批判した。
 また、ロシア外務省も同日声明を出し、THAAD配備が「世界の戦略的安定に悪影響を与える」と批判、「非常に深刻な懸念」を表明した。声明はTHAADについて「地域の緊張を高め、非核化の課題を含む朝鮮半島の複雑な問題を解決する上で、新たな障害をつくり出す」と指摘し、配備決定を見直すよう求めた。

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