ようやく政権に就いたが、残された時間は決して多くはない(C)EPA=時事

 

 3月末に国民民主連盟(NLD)が国会に提出した法案審議の結果、スー・チー党首が「憲法に反せずに国家に対する助言を行いうる」と定めた新設ポストの「国家顧問」に就任している。外相、大統領府相に加え国家顧問を占めたことで、「大統領以上の存在になる」という彼女の願望は達せられたことになる。

「首脳会議では大統領は私の隣に座ることができる」などといった彼女の発言が報じられたが、やはり先に挙げた「スー・チー氏は全て自分で支配しなければ気が済まないようだ」との危惧の念が現実化する可能性も考えられる。

 それというのも、彼女が反軍政のシンボルとして内外から殊に注目を集めるようになった1990年代初頭、隣国タイで首相顧問としてカンボジア各派との複雑極まりない調整役を務めたカンボジア和平の黒子役的人物が、「スー・チーは民主化のポル・ポトだ。ポル・ポトが抱えた欠陥を彼女も持っている。もちろん、毛沢東原理主義と民主化原理主義の違いはあるが」と漏らしたことを思い出したからだ。はたして民主化を掲げて独裁の道を突き進む危険性はないのか。

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