ヌスラ戦線がアル=カーイダから分離

執筆者:池内恵2016年7月28日

シリアの反体制武装勢力ヌスラ戦線が、アル=カーイダからの決別を宣言した模様だ。

7月28日にアラビア語衛星放送局アル=ジャジーラが放送した映像によれば、ヌスラ戦線はアル=カーイダから分離し、「シャーム征服戦線」(Jabha al-Fath al-Sham)と改称したものとされる(アラビア語のFathはイスラーム教初期の「征服」を意味し、そこから不信仰からの「解放」を意味する。「シャーム」は現在のシリアとレバノンを中心とした「拡大シリア」を意味する)。映像ではヌスラ戦線の指導者ゴーラーニーが、これまでほとんど知られていなかった素顔を晒し、声明を読み上げている(BBCの速報:適宜アップデートされるようである)。

ヌスラ戦線のアル=カーイダからの離脱は、ここのところ専門家の間で噂されており、映像の内容もSNSなどで断片的に伝わっていたが、アル=ジャジーラによる映像の放送により、明確に周知された形になる。

ヌスラ戦線は元来がアル=カーイダ系で、「イラクのアル=カーイダ」から改組された「イラクのイスラーム国」(後の「イスラーム国」)が、シリアに進出する際に分遣隊として造られたという経緯があるが、シリア内戦で反アサド勢力の最有力勢力として台頭し、「イスラーム国」とは袂を分かった後はしばしば競合・対立する。ヌスラ戦線はアル=カーイダの「正統の」シリアでの勢力としてアル=カーイダの最高指導者ザワーヒリーから認められ、忠誠を誓ってきた。

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