表明に至るまでのご心中はいかばかりか……(C)時事

 

 天皇陛下が生前退位の意向を示唆されたことを機に、皇室や王室など、現代における君主制の役割に改めて注目が集まっている。君主国にはどのような国があって、どのような顔ぶれなのか。新しい世代への譲位はうまくいっているのか、君主制のリスクとは何か……。以下、今回はいつもの「饗宴外交」から趣向を変え、「現代君主考」である。

 

社会の安定装置

 君主国ファミリーは現在世界に29カ国ある。20世紀になった頃、世界には100を超える君主国があった。しかし革命や政変によって、最高権力者を選挙で選ぶ共和制へと転換する国が相次ぎ、現在は1世紀前の3分の1以下となった。

「世襲の君主制は民主主義に反する」との声も一部にはある。英国やスペインでは、王室の廃止を求める団体がデモや署名活動を行っている。その一方で、政治・社会的な利害が錯綜し、世論が流砂化する時代において、君主制の肯定的側面を指摘する政治学者も少なくない。

 有権者によって一定期間、最高権力を託された共和制の下での大統領も、政争や政治的駆け引きから無縁でいることはできず、これが社会の不安定化につながりかねない。これに対して民主主義国の立憲君主は、政治に関与せず、党派性を超えて国民全体を束ねる象徴として、社会の安定装置の機能を果たしているという。

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