8月12日、クレムリンで前任の大統領府長官セルゲイ・イワノフ氏(左)、プーチン大統領(中央)と会うワイノ新大統領府長官 (C)AFP=時事

 ロシアのプーチン大統領が8月12日、長年の盟友だったセルゲイ・イワノフ大統領府長官(63)を更迭し、アントン・ワイノ副長官(44)を昇格させたことは、「古い友人を使用人に取り替える人事の一環」(政治評論家、スタニスラフ・ベルホフスキー氏)と受け取られている。大統領府長官は巨大な権力機構となった大統領府を統括する重要ポスト。9月18日の下院選を控え、世代交代や指導部一新が進む可能性もある。「反日派」のイワノフ氏が「知日派」のワイノ氏に交代することは、日本の対露外交にとってプラスとなる。

東京に5年勤務

 政界では無名のワイノ氏は1972年エストニアのタリン生まれ。祖父はソ連エストニア共和国共産党第1書記、父は大手企業幹部。モスクワの国際関係大学卒後、外交官となり、96年から2001年まで東京のロシア大使館に外交官として勤務した。在外勤務は日本だけで、英語と日本語を操る。
 在日ロシア大使館関係者によると、プーチン大統領が2000年に沖縄サミット(主要国首脳会議)と公式訪問で2度訪日した際、ワイノ氏は大使館の儀典担当として大統領に付き添い、目をかけられたという。帰国後は外務省第2アジア局を経て02年に大統領府に転出。儀典局で働き、08年にプーチン氏が首相に転出すると、首相府の儀典局長に就任。12年にプーチン氏が再度大統領に復帰すると、大統領府副長官に任命された。今回の大抜擢も明らかにプーチン氏の引きだが、地味な官吏の印象のワイノ氏がなぜプーチン氏に気に入られたかは謎だ。
 モスクワ・タイムズ紙(電子版)によると、クレムリンに近い筋は「彼は完全に中立で礼儀正しく、純粋な官僚だ。議論しようとはせず、質問もしない。プーチン大統領の個人的な選択だろう。起用に驚きはなく、いずれ長官になるとみられていた」と指摘した。今年春から長官の交代説が流れていたらしい。 

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