8月24日にトルコがアレッポ北方の、筆者がシリアートルコ「回廊」地帯と呼んでいる戦略的要地に軍事介入を開始したが、シリア内戦では複数の戦線が並行して展開しており、他の戦線でも重要な動きがあった。

概括すると、シリア内戦は主要勢力がそれぞれの勢力範囲を固める動きが進み、入り組んでいた戦線が徐々に整理され、諸勢力の範囲が明確になる「棲み分け」が進んでいるといえよう。アレッポ北方ではトルコの介入によって勢力伸張を阻まれたクルド人勢力だが、本拠地というべき北東部では支配を固めている。それがハサケの中心部でのクルド人部隊とアサド政権部隊の衝突、クルド人部隊の掌握というニュースに表れている。

北東部の主要都市ハサケ(Hassakeh; あるいはハサカ Hasakah)には、クルド人だけでなく、アラブ人やアッシリア人など複数の民族が混住している。シリア内戦の激化の中で、アサド政権は北東部の支配を、徐々に穏便な形でクルド人部隊に譲り渡していったが、ハサケ及び北東部の突端に近い地域の主要都市カーミシュリーの中心部には部隊を残し、飛び地のように立てこもっていた。

8月17日頃から、ハサケをめぐってクルド人部隊とアサド政権の部隊との衝突が生じ、18日には、アサド政権がこの近辺のクルド人組織に対して初めての空爆を行った。直接の対立を避け共存する傾向が見られたアサド政権とクルド人部隊の間に衝突が起きた背後には、トルコとアサド政権が反クルドで密約を結んで同時に攻勢に出た、といった憶測も呼び覚ました。

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