9月9日(10日)のジュネーブ合意(あるいはこれをシリア内戦をめぐるジュネーブⅣ合意とでも呼べばいいのだろうか。2月22日発表の「停戦」合意はジュネーブⅢ会議での合意とみなされている)による現地の戦闘への影響が望み薄という見通しを書いたが、現在の動きの中でシリア内戦やシリアの将来により直接的に影響を及ぼしうるのはむしろ、8月24日に「ユーフラテスの盾」作戦により、シリア北部・アレッポ北方のジャラーブルスに地上部隊を侵攻させた後の、トルコの政策である。

トルコは早期にジャラーブルスから「イスラーム国」勢力を追い、ユーフラテス河以西にマンビジュを皮切りに進出していたクルド系のPYGを牽制した。その上で、2週間後の9月5日には西方のアッ・ラーイー(al-Ra'i)に再び地上部隊を侵攻させて自由シリア軍に属する友軍を支援してこの町から「イスラーム国」を放逐した。 トルコに支援された自由シリア軍の部隊は9月9日に南方のアル・バーブ(al-Bab)に向かい、ここからも「イスラーム国」は早期に撤退した。これによってトルコは国境地帯から「イスラーム国」を排除したと主張している。

実際には、トルコはジャラーブルスからアッ・ラーイーとアル・バーブにかけてを支援勢力と共に抑え、それまでに影響下にある部隊が確保してきたさらに西方の国境地帯のアアザーズ(A'zaz)などと共に支配下に置くことで、アレッポ北方に勢力圏を作った形だ。

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