シリア「停戦」はまだ「死んでいない」?

執筆者:池内恵2016年9月21日

シリアで9月12日に発効したはずの「停戦」は、大方の予想通り、有名無実であるようだ。「暴力の削減」としての「停戦」は、当初の目標通り1週間続いたものの、9月19日には、アレッポの反体制派掌握地域に向けて人道物資を運んでいた車列に、アサド政権の軍が空爆を行った

もともと停戦合意では、米・露・アサド政権のいずれもが、標的を「イスラーム国」やアル=カーイダ系の旧ヌスラ戦線、あるいは「テロリスト」と認定すれば攻撃を続けていいことになっている。アサド政権の定義ではアレッポ内外の反体制勢力は基本的にすべて「武装した過激派・テロリスト」であるため、元来は1日も停戦を行わなくていいという立場だろうが、米との停戦合意締結にそれなりの意味を見出すロシアに若干の恩を売るためにか、また政権の正統性を印象付けるためにか、一時的に従って見せた。そして、何事もなかったように軍事作戦を再開している。

ニューヨークで国連総会が開会し、首脳級による一般演説が行われているが、舞台裏ではやはりシリア内戦が主要議題となっているようだ。しかしアサド政権の停戦破りに対する米国の非難の矛先は鈍らざるをえない9月17日に米軍はラッカの「イスラーム国」に対する攻撃の際に、アサド政権軍を誤爆した。一貫してアサド政権軍への軍事攻撃を注意深く避けてきた米国にとって、タイミングの悪い時期の誤爆となった。

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