密かに進む「三井住友ゆうちょ銀行」計画

執筆者:本田真澄2008年5月号

自分では上場できない図体の大きな新参者と、「万年三位」のメガバンク。両者がいま急接近しているという。「全国銀行協会会長の任期を終えれば、奥(正之・三井住友銀行頭取)さんはフリーハンド。(メガバンクの)万年三位から一発逆転を狙って西川郵政との提携に動くはずだ。対抗策を考えないといけない」 奥氏の会長任期は四月二十一日まで。刻々と近づく“その日”を目前にみずほ銀行幹部はそう語り“究極の金融再編”に警戒感を露にした。「三年後の株式上場を目指し、経営基盤を固めることを急ぎたい」 従業員二十四万人の日本郵政グループを率いる西川善文社長は、年初の訓示で幹部にそう発破をかけ、持ち株会社の「日本郵政」と傘下の「ゆうちょ銀行」「かんぽ生命」の早期株式上場への強い決意を示している。しかし、ゆうちょ銀もかんぽ生命も「民間企業としての競争力がないままではエクイティストーリー(上場計画)は描けない」(郵政グループ関係者)。金融庁や総務省の関係者も「システムやコンプライアンス(法令遵守)体制なども全く整っておらず、常識的には三年後の上場など不可能」と否定的だ。 だが、かつて三井住友銀行頭取として収益至上主義を推し進めてきた西川氏は、そのことを十分わかっているはず。それでも「人生で最後のご奉公」と日本郵政トップを引き受けた手前、小泉政権下で竹中平蔵元総務相が描いた「早期の株式上場」を最大の課題として自らに課し、周囲に「絶対に遅らせない」と語り執念を燃やす。西川氏が早期上場を可能にするカギと見ているのが、大手金融機関との提携だ。それも「システム構築から、商品開発、人材育成まですべて民間金融機関の手を借りる荒療治」(ゆうちょ銀関係者)。金融界はその相手を古巣の三井住友グループとみて、両者の“合体”を警戒しているのである。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。