波乱万丈の生涯を歩んだ「メディア王」(C)AFP=時事

 

 8月末から9月初めにかけてバンコクを歩いた。

 1年前のバンコクでは、王妃誕生日を祝い、先導する皇太子にプラユット首相以下、閣僚、国軍幹部など“文武百官”が従う自転車パレードが華やかに行われている。その翌日にエラワン廟爆破事件が発生したこともあり、街のそこここにはそれなりの緊張感が感じられた。だが、今年は違った。王妃誕生日祝賀の8月12日と前日の11日に南タイで連続8件の爆破テロ事件が発生したというのに、地下鉄、高架鉄道、さらには巨大ショッピング・モールでも、去年ほどの警戒態勢すらみられない。

 例年ならバンコクの各所で見かけることが出来たはずの王妃誕生日を祝す華やかな飾りも僅かに数カ所でみられる程度であり、それも大掛かりなシリントーン王女のそれとは余りにも対照的だった。

 

なぜ、今この時期に

 8月31日、プラユット首相は、国防大臣・国軍最高司令官・3軍司令官の協議によってプレム枢密院議長を国防省顧問委員会主席に委嘱したことを発表し、同時に国内各方面に対し、(1)同議長を現実政治の政争に巻き込まないよう(2)政府は既定の方針に従って総選挙を実施する――と語っている。だが、国軍主体の現態勢継続を完全否定したわけではない。

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