世界経済「奇妙な小康状態」の因数分解

執筆者:青柳尚志2016年11月1日
数値上は回復基調にあるようだが……(C)AFP=時事

 

 年初来、想定外の出来事が相次いでいたグローバル経済が、いま奇妙な小康状態にある。リスク要因を挙げればキリがないが、経済が底割れする事態は防がれている。株価や原油はどちらかといえば、持ち直している。これから冬を迎える前の小春日和のようなひと時の平穏は、なぜ生じているのだろうか。

 大きなポイントは中国経済だ。10月25日、日本政府は中国経済に関する基調判断を、さりげなく上方修正した。9月までの「緩やかに減速している」から、「各種政策効果もあり、景気はこのところ持ち直しの動きがみられる」へと変更したのである(月例経済閣僚会議資料11頁)。単なる「月例文学」でないことは、資料につけられたグラフをみればハッキリする。

 9月の乗用車販売台数の前年比は28.9%増えた。2015年夏には前年比でマイナスに落ち込み、2016年1~4月には1桁台の伸びだったのと比べれば、明らかに勢いを取り戻している。9月の中国での新車販売は、ホンダが前年比46.5%増えたほか日本勢が軒並み大幅増となり、米国、ドイツ、韓国勢もそろって快走した。

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