中東・北アフリカと西欧は、地中海によって隔てられている。しかしスペインがモロッコを植民地にしていた名残で、メリリャとセウタがモロッコの中にスペイン領の飛び地として残っている。ここにアフリカ各地から、西欧への移民を試みる者たちが押し寄せる。二つの飛び地には何重にもフェンスが張り巡らされているが、それでもしばしば乗り越えようとする移民の群衆との攻防戦が繰り広げられてきた。域内の移動を自由にしたEUが、内部での豊かさを守るために必要とする「外壁」は、例えばこのような場所に目に見える形で存在している。

 数年間にわたって攻防戦を繰り広げてきた現場の警官の疲労は激しいという。

 しかし、同じ北アフリカでも、リビアが「アラブの春」で体制が崩壊し、国境管理の主体がいなくなり、移民・難民をEU圏に渡航されるブローカーが次々に現れたことで、これまでメリリャとセウタに集中していた移民の波が、別の目的地を見つけて、部分的に逸らされたとは言える。しかし移民・難民の動きが大規模化しているので、依然としてこの二つの飛び地にも越境を試みる人波が絶えない。

 

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