「イスラーム国」の領域支配に対して、各国で掃討作戦が始まっている。イラク北部モースルでは10月17日から、イラク政府軍・協力民兵組織や、北部のクルディスターン地域政府のペシュメルガなどが、米国やイランに支援されて奪還作戦を行っている。シリア北東部のラッカに対しても11月5日からクルド人勢力主体のシリア民主軍(SDF)が、掃討作戦「ユーフラテスの怒り」を始めたという。

 それらの帰結はいつ、どのように明らかになるのか。単純に「『イスラーム国』がいなくなりました、国は平和になりました」とは到底なりそうにない。その理由は、第一に、そもそも紛争・内戦の渦中にある両国では「イスラーム国」は治安と秩序を乱す勢力の「ひとつ(ワン・オブ・ゼム)」でしかないことで、「イスラーム国」の制圧は紛争と内戦を終わらせることはないという単純な事実だが、第二に、「イスラーム国」が組織というよりは思想・イデオロギーであって、イデオロギーに感化される社会の成員がいる限り、何らかの形で存続してしまうことがある。そのような道筋を、今から想定しておくべきだろう。

リビア・スィルトの「イスラーム国」勢力掃討作戦は「ミッション・インコンプリート(任務完了せず)」

 参考になる例はリビアだろう。リビアでは統一政府として国際的に認められた国民合意政権(GNA)が、5月以来、各種部隊を動員して「イスラーム国」の支配地域への掃討作戦(Al-Bunyan Al-Marsoos)を行い、6月9日からはスィルト制圧作戦を、米国や英国などの支援も受けて、大々的に実施してきた。8月には「ほぼ完了」と連日報じられるほどになった。

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