コミーFBI長官の「ガス抜き」は成功したのか? (c)AFP=時事

 米大統領選挙の最終盤、クリントン前米国務長官(69)のメール問題捜査をめぐり、わずか10日の間に、「捜査再開」から「(不訴追の)決定に変更なし」と大きく揺れた米連邦捜査局(FBI)。
「捜査再開」で支持率が低下したクリントン氏を猛追した共和党トランプ候補(70)は、今度は「不訴追」が確認されて勢いをそがれ、民主党クリントン氏は差を広げた。
 選挙情勢に重大な影響を与える行動を決して起こしてはいけない「原則」が法執行機関にはある。だが、「誤解される重大なリスク」を予見しながらも、あえてローラーコースターのような展開を招いてしまったジェームズ・コミーFBI長官(55)。2度にわたりお騒がせ発表をした長官に、どんな事情があったのだろうか。

理由不明の再捜査

 投票日のわずか11日前の10月28日、コミーFBI長官が上下両院の情報特別、司法など3委員会と歳出委員会の関連小委の各委員長(共和党)と副委員長(民主党)計16人に対して出した書簡はわずか11行と短く、重大な中身にしてはそっけなかった。
 FBI長官は7月の議会証言で、クリントン前国務長官のメール問題の「捜査完了」を伝えたが、今回「別件」で、「捜査に関連するとみられるメールの存在を知るに至った」。捜査チームは前日、長官にそのことを説明したので、「私はこれらのメールの中に機密情報が含まれるかどうか判断するため、捜査を認めた」というのだ。
 そして現時点では、重要なメールかどうかの評価はできないし、追加捜査にどれほどの時間を要するか予測できないとしながらも、報告したのは「各委員会にFBIの努力の現状報告をするのは重要」だからだと説明している。
 これでは、なぜ捜査を再開するのか、さらに捜査再開を報告する必要があったのか、全く分からない。
 FBI職員あてのメールもさらに意味不明だ。そもそも「進行中の捜査について議会に報告することは普通はやらない」と断りつつ、今回は「先に議会で捜査完了を繰り返し証言したので、義務を感じた」からだ、とだけ指摘した。
 さらに、あえて捜査再開を公表した理由も論理的に説明できず、「選挙中に誤解される重大なリスクがあるので、職員のみなさんに直接聞いてほしかった」と最後までさっぱり理解できない内容だった。

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