トランプ大統領のもとで、米国の中東政策はどう変わるか。

 選挙戦中の発言や、トランプの中東政策に影響を与えそうな側近の発言などを手掛かりに、この欄で数回に分けて、シリア内戦問題やイラン核合意などの個別の課題について、順次見通しを示しておこう。

 ただし現時点での見通しは、あくまでも選挙期間中の候補者の発言に基づくものであり、当選するかどうか分からない段階で集まってくる支援者・助言者の見解、あるいはそれらを総合した観測などを勘案して推測するものでしかない。実際に米国がトランプ大統領のもとで制度的意思決定を行い政策を実施することになる政策を現時点で正確に把握することは、不可能な作業である。

 実際のトランプ政権下での対中東政策は、政権の外交・安全保障担当の人事、政権(ホワイトハウス)と国防総省や国務省との関係、共和党が上下両院で多数を占めた連邦議会との関係、より重要な内政課題や他地域との外交・安全保障上の関係の変化、等々によって大きく左右される。そのため現時点での見通しの一部は必然的に大きく外れることになることを留意されたい。

敗者はシリアの「穏健派」反体制派 

 トランプの発言に顕著なのは、中東など「遠い、米国との関係がよく分からない」地域への関与を控える姿勢だろう。このことから、トランプ当選によって中東で真っ先に「敗者」扱いをされるのが、シリアでアサド政権と戦ってきた「穏健派」の反体制派である。

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