11月9日、「祝福メッセージ」を発表するメルケル首相 (C)AFP=時事

 アメリカ大統領選のドナルド・トランプ当選により、今後の対米関係構築で最も難しい立場に置かれる西側主要国の指導者としては、ドイツ首相メルケルの名が真っ先に挙げられる。
 大統領選の最中、トランプは対抗馬のヒラリー・クリントンを「アメリカのメルケル」と呼び、メルケル同様、間違った移民政策を実行に移す、と繰り返しクリントンを攻撃した。
 トランプはまた、メルケルの難民政策を「壊滅的」と批判、「精神疾患」とする暴言まで吐いた。昨年11月のパリ同時テロ事件については、トランプは「難民を呼び寄せたメルケルの大失策」と主張した。 

異様な「祝福メッセージ」

 無論、メルケルもトランプに厳しい。
 11月9日、メルケルが発表した「当選祝福のメッセージ」はある種異様であり、トランプに教え諭すような内容となっていた。
 その中でメルケルは、ドイツとアメリカは「民主主義と自由、法の尊重、出自や肌の色、宗教、性別、性的志向、政治信条にかかわらない人間の尊厳の尊重という価値観によって結ばれている」と述べ、「こうした価値の土台に立った上で、私はトランプ氏に緊密な協力を提案する」と呼び掛けた。
 メッセージは、トランプが以上のような価値を重んじなければ協力できないという、メルケルの厳しい覚悟をにじませている。「メルケルはトランプに、米独協力の前提条件を突きつけたのか」という驚きの声も上がるほどだ。
 翌10日、メルケルとトランプは電話で話したが、その内容はほとんど明らかにされていない。儀礼上のやりとりすら伝えられておらず、ぎごちない会話が続いたのではないかと推察されている。 

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