北朝鮮の動きの中で気になるのは、「崔順実(チェ・スンシル)ゲート」を受けて機能不全に陥っている朴槿恵(パク・クネ)政権への対応だ。「崔順実ゲート」が韓国で10月下旬から問題化し始めると、北朝鮮メディアはこれを異例の迅速さと、異例の詳しさで報道している。北朝鮮への対決姿勢を示していた朴槿恵政権の機能不全に「ざまあみろ」という心理が働いているのはよく分かるが、北朝鮮は、韓国を分かっているようで分かっていない。

現地指導は「民生」から「軍事」へ

 北朝鮮メディアは9月22日に、金正恩(キム・ジョンウン)党委員長が9月9日の第5回核実験成功に寄与した関係者と記念撮影を行ったと報じた。金正恩党委員長はこの記念撮影を1つの区切りにし、それ以降は、「大同江注射器工場現地指導」(9月24日報道)、「龍岳山わき水工場現地指導」(9月30日)、「万景台革命史跡記念品工場現地指導」(10月7日)、「柳京眼科総合病院現地指導」(10月18日)、「龍岳山石けん工場現地指導」(10月29日)と民生部門の現地指導を続けて来た。

 しかし、10月下旬になり韓国情勢が一気に不安定化した。すると、金正恩党委員長は11月以降、公式活動を軍事部門中心へと転換した。党機関紙「労働新聞」は11月4日、金正恩党委員長が朝鮮人民軍525軍部隊直属特殊作戦大隊を視察したと報じた。この大隊は「青瓦台と傀儡政府、軍要職に居座って千秋に許せない希代の大逆罪を犯している人間のくずを除去することを基本任務にしている特殊作戦大隊」(労働新聞)だ。米韓両軍が金正恩氏ら北朝鮮首脳部の除去を目的にした「斬首作戦」を明らかにしていることへの対抗措置だ。

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