世界の「壁」を中東から考える(4)レバノン政府がパレスチナ難民キャンプを壁で囲む
2016年11月23日
「壁」をキーワードにしてニュースを見ていると、各地でそれぞれの政治情勢を反映した理由で、壁が建設されている。
11月初頭に、レバノンの南部の地中海岸の街スィドン(サイダーとも呼ばれる)の南東アイン・ヒルウェ(Ain al-Hilwe)にある、国内最大規模のパレスチナ難民キャンプを囲む壁の建設が決まり、19日にはすでに壁の建設が着工に移されたと報じられている。
パレスチナ系のメディアやSNSの上では、壁の建設を非難する声も挙がっているものの、この壁はレバノン政府が、パレスチナ難民キャンプを支配するPLOファタハやハマースと合意した上で、レバノン軍によって建設が進められているものである。
壁には監視タワーが随所に設けられ、難民キャンプの住民は出入りに際してレバノン政府の部隊による検問を受けることになる。
なぜこのようなことになるか。
アイン・ヒルウェの難民キャンプは7万人規模とされてきたが、2011年のシリアでの紛争の開始以降、シリアのパレスチナ難民キャンプから移動してくる難民により住民は12万人に達していると言われる。
レバノンの領土内だが、キャンプの中にはレバノンの軍や警察が立ち入れない、事実上の国内国家の地位を確保してきた。
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