南スーダン派遣隊を悩ます「2つの指揮系統」

執筆者:林吉永2016年11月30日

 さる11月18日、南スーダンにおけるPKO(国連平和維持活動)第11次派遣隊に対して「駆けつけ警護(国連やNGO職員、他国軍の兵士などが武装集団や暴徒などに襲われた際、救助・救援・警護の要請を受け、陸自隊員が現場に急行し、防護あるいは救出する任務)」および「共同防護(PKOの宿営地を他国隊と連携して防護する任務)」が発令された。
 政策も陸自施設隊も、もう後戻りできない。しかも、派遣された陸自隊員は、現地の民間人や他国派遣隊の隊員の目に「陸軍工兵隊の軍人」と映る。彼等には、陸自隊員が「軍人」ではなく特別職の国家公務員であることなど分からない。

日本とUNMISS

 陸自施設隊は、道路整備、敷地造成、給水、医療などの活動を行っている。日本の法制に基づいた自衛隊の指揮系統が存在する一方、PKOを統括しているのは「国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS “United Nations Mission in the Republic of South Sudan”)」(国連安保理決議第1996号)である。2011年、南スーダン独立時に設立された組織であるUNMISSは、国連事務総長特別代表の下、司令部(派遣自衛官が勤務)および軍事部門で組織され、軍事司令官は、実働部隊(陸自施設隊および他国隊)を指揮する。従って、陸自施設隊には事実上、日本およびUNMISSの2つの指揮系統から「活動業務のオーダー」が流れることになる。【「防衛省統合幕僚監部ホームページ」参照】
     
 現地では、7月に激しい戦闘が発生し、対処が不適切だった軍事司令官は更迭され、UNMISSの防護体制強化が行われた。10月には、首都ジュバ近郊でトラックに乗った女性や子供を含む民間人20人以上が殺害される事案が発生し、しかも国連の立ち入りが拒否されている。

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