歴史は動き、「民主化後」の時代に突入した。国民党に再び政権をもたらした馬新総統は、米中との関係をうまくコントロールできるのか。[台北発]台湾総統選を六日後に控えた三月十六日夜、民進党総統候補の謝長廷氏は台湾交通網の新しい動脈「台湾高速鉄路(台湾新幹線)」でグリーン車の椅子に沈み込んでいた。「ラストサンデー」の同日、中部の台中市で行なわれた大規模な選挙集会を終えて台北に向かう帰路。隣に座る私に、残り数日をどう戦うか話した後で眼鏡を外し、選挙運動疲れから真っ赤に充血した目を手でこすりながら謝氏はつぶやいた。「時間が足りなかった……」 過去形の言い方に驚いた私が「チベット騒乱の鎮圧があなたの追い風になるのでは」と問いかけても「(国民党候補の)馬(英九)さんも中国を批判しているからね」と乗ってこない。一月の立法院選で大敗した翌日、同じく台湾新幹線の車上で「有権者が国民党の一党独裁への危機感を持てば、必ず逆転できます」と自信を込めて私に語った時とはまるで別人だった。 その時点で謝氏は覚悟していたのだろう。三月二十二日の投開票の結果、謝氏は国民党の馬氏に二百二十一万票の大差をつけられて敗れた。逆転を狙い、馬氏の米国グリーンカード(永住権)取得歴問題や中国との「両岸共同市場」政策を攻撃して多少は追い上げたものの、国民党政権奪還への「王牌(切り札)」である馬氏の勢いを止められなかった。

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