マリ北部紛争を描いた映画『禁じられた歌声』が描くイスラーム世界のバベルの塔
2016年12月10日
今日は、ある大学のゼミが企画して行っている映画祭で、企画の学生たちからの依頼を受けて、近年のイスラーム主義過激派のジハードにまつわる映画を見て、トークを行ってきた。
下調べや、実際に映画を見て読み取った内容をメモにしてあるのだが、トークでは時間も短かったため話しきれなかった。どうやらフォーサイトの読者の方々も来ていただいていたらしいので、場所を変えてこの欄に記しておこう。
映画『ティンブクトゥ』
映画は「禁じられた歌声」(原題はTimbuktu)、アブデッラフマーン・シーサーコー(Abderrahmane Sissako)監督、2014年、フランス・モーリタニア製作。2012年から13年にかけてのマリ北部紛争を背景にして、ティンブクトゥを舞台にした映画である。
昨年の暮れに日本でも公開されていたようで、私もいくつか中東研究者や政治学者・映画評論家の評を目にした覚えがあるが、むしろそれらを読んでしまったために、かえって通り一遍の過激派批判の映画を予想し、つい見逃してしまっていた。
「トークを依頼された機会に一度見てみてもいいか」と軽い気持ちで引き受けたのだが、実際に見てみると、これが実によくできていた。
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