連日盛況で、注目を集めている(筆者撮影)

 

 美術の展覧会には2種類あって、幕の内弁当のように、あれもこれも何でも見せようというタイプと、牛肉弁当みたいに、ワンテーマでがつんと楽しませるタイプがある。どちらもそれぞれメリット、デメリットがある。総じて、私は後者の方が好きだ。前者の場合、玉石混淆な展示品のなかで、いいものを見極めるのにひと苦労するというのもあるし、テーマがすっかりぼやけてしまって、いったい何を見にきたのかわからなくなってしまう。展示する方も何を売り物にすればいいのかわからないような展覧会も少なくない。

 その典型例が、2014年に行われた東京国立博物館による台北故宮展だった。台湾から「人気国宝」と称される翠玉白菜を持ってきたのはいいけれど、有名ではあるが、美術史的には価値の低いものなので、今ひとつほかの展示品とのつながりを提示できなかった。

   2週間しか貸し出されなかった翠玉白菜が台湾に戻ってしまったあとの展覧会はほとんど盛り上がらず、入場者の人数も含めてまったく満足いく結果にはならなかった。長年期待されてきた展覧会であったのに、大変残念なことだった。

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