暮れの慌ただしい、しかしどこか手持ち無沙汰の時間帯に、2016年12月末の中東情勢をメモしておこう。

12月半ばのシリア反体制派のアレッポ東部陥落/アサド政権による制圧以後のシリア内戦は、ロシア主導でトルコがこれに追随する展開になっている。オバマ政権が政権末期でレイムダック状態になり、トランプ次期政権が待ち構えている米国の影響力は低下している。

12月29日には、ロシアとトルコが主導した停戦案アサド政権と主要反体制派が受け入れた。過去の停戦と同様に、アサド政権やロシアが任意の対象を「テロリスト」と認定して攻撃を続けられる条件である。しかもトルコが深く関与したことで、トルコもまたシリアのクルド人勢力に対しては「テロリスト」と認定して停戦にかかわらず攻撃を続けることを可能とする言質を得ている。また、反体制派諸組織も足並みが揃っているわけではない。このため、停戦によって戦闘が完全に止まるわけではないが、一定の沈静化が見られている。

NATOの一員で米国の中東における重要な同盟国であるトルコが、いっそうのロシア接近に傾斜している。トルコのエルドアン大統領は米国がシリアで「テロリストを支援している」と非難してロシア・プーチン大統領と歩調を合わせる。「テロリスト」という言葉をロシアはイスラーム主義武装組織を指すものとして用い、トルコはPKKとも関係が深いクルド人武装組織のことを指す。同床異夢であることが分かっていても、このようにロシアに追随して対米姿勢を強めることで、エルドアン大統領とすればロシアのクルド人組織への支援を食い止めようと願っているのだろう。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。