著書を手に持つ閻連科氏(著者撮影)

 

 中国を代表する作家で、日本の村上春樹と並んで、ノーベル文学賞の候補にも挙げられる閻連科。その最新作『炸裂志』(泉京鹿訳、河出書房新社)がこのほど日本で出版された。

 その内容は、改革開放の中国社会のなかで、あらゆる不正行為に手を染めながら、村から鎮へ、鎮から県へ、県から直轄市へと階段を上っていく「炸裂」という想像上の地域を舞台にした巨大な寓話である。

 もともと村の有力者だった孔一族とその周辺の人々が、不正、贈賄、泥棒、売春、ゆすりなどあらゆる手段を使ってのし上がり、権力をつかみ、富を蓄積していく。そのスピード感は、1990年代から止まった時間を過ごしてきた私たち日本人にとっては、ある種の爽快さや嫉妬すら感じさせる。

 そう、この30年間の時間感覚が、私たちと中国人では違うのである。

 中国語で25万字、日本語で45万字(400字詰め原稿用紙1125枚)の大作(解説含む)だ。しかし、読み始めてその世界に入ってしまえば、あっという間に読了させる磁力を持った作品である。

 中国の改革開放が始まったのが1978年。今日までの間、中国のGDP(国内総生産)は世界第2位になり、平均所得も上海、北京、深圳などの都市部は先進国並みに近づいている。

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