トランプ大統領が選挙期間中公約として掲げ当選後も再確認し、1月20日の就任式後の初の週明けの23日にも決定が発表されるという報道が一部で流れていた、在イスラエル米大使館の、テルアビブからエルサレムへの移転問題だが、当面先送りにされたようだ。

1月26日の米FOXニュースのインタビューで、トランプはこの問題について「まだ話したくない。早すぎる」と述べた。トランプ政権筋からは、移転は「初期の段階にある」との見解が漏れているが、先延ばしをすればするほど実現性は低くなるという見方がある。

エルサレム問題は現実政治の枠を超えて、宗教的な感情的な問題であり、これを米国の大使館移転という象徴的な行動で刺激すれば、現地で、あるいは世界各地で、抗議行動や衝突、テロなどを刺激することは確実である。米国が単独で大使館移転を行うことに、米国にとっての戦略的な利益はほとんどなく、中東政策の理念だけでなく実効性を一層失わせることは確実の「悪手」である

イスラエルは一方でエルサレムを首都と謳い各国の大使館がエルサレムに移ることを要請しているが、他方で、サウジアラビアやエジプトやトルコなど、現実政治の上での利害の一致から接近するアラブ諸国や中東諸国との協力関係をここで壊したくはない。米国が大使館を移転すれば、アラブ諸国や中東諸国の政権はイスラエルとの対立を標榜するしかなくなる。

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