金正男氏暗殺の謎:「白頭の血統」の視点から

執筆者:平井久志2017年2月18日
「白頭の血統」を否定してまで、金正恩氏(右)が兄・金正男氏(左)を「暗殺」する理由はあったのか (c)AFP=時事

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄である金正男(キム・ジョンナム)氏が2月13日午前、マレーシアのクアラルンプール空港で毒殺された。

「金正男死亡の情報」

 実は、筆者は2月14日の午後の早い段階で、金正男氏が死亡したという情報に接した。韓国の情報機関・国家情報院が確認に動いているようだった。しかし、筆者は、この情報に敏感に反応できなかった。それには筆者なりの理由があった。年齢も若い金正男氏が死亡したとなると、考えられるのは「暗殺」だった。金正男氏を暗殺するとなると、それは常識的には北朝鮮しかない。

「白頭の血統」

 北朝鮮では過去、凄まじい粛清が繰り返されてきた。幹部が粛清されたり、銃殺されたりすることはよくあることだ。しかし、これには例外があった。故金日成(キム・イルソン)主席の血筋を引く「白頭の血統」の者が殺されたことはない。金ファミリーでも、金正恩党委員長の叔父である張成沢(チャン・ソンテク)党行政部長が粛清・処刑され、金正男氏の叔母にあたる成蕙琅(ソン・ヘラン)の息子・李韓永(リ・ハンヨン)氏が亡命先のソウルで北朝鮮工作員とみられる者に銃殺されることはあった。しかし、張成沢氏も李韓永氏も金ファミリーであり、金日成主席の姻戚ではあるが、金日成主席の血は引いていない。

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