1月27日の入国制限の大統領令では7カ国(イラン、イラク、リビア、ソマリア、シリア、スーダン、イエメン)、3月6日の大統領令ではそこからイラクを除いた6カ国が、テロリストの米国への侵入を防ぐという目的で、国籍保有者の入国を厳しく制限されることになったが、これは適切なのだろうか。この問題には論点が複数ある。特に、「これらの6カ国(当初は7カ国)を選別する」ことの適切さと、それらの国籍保有者の「入国を制限する」ことの適切さを、分けて検討する必要がある。

これらの国々を「テロ支援国家」として問題視することは、トランプの独断やきまぐれによるものとは言い切れない。それらの国と関係する人々の米国への入国を制限、あるいは審査を特に厳しくすることがテロ防止に役立つという考えも、是非はともかく、トランプ独自のものではない。しばしば忘れられがちなことだが、2015年12月8日に米連邦議会が可決したビザ免除厳格化法(H.R.158 - Visa Waiver Program Improvement and Terrorist Travel Prevention Act of 2015)とその施行過程で、これら7カ国をテロ対策の観点から人的交流を厳しく監視する対象として特定していた。この法で対象となったのは、それらの国の国籍保有者ではなく、それらの国に渡航歴がある外国人が米国に入国する際の、ビザ免除からの除外である。7カ国の国籍保有者については、そもそもビザ免除の対象にはなっていないため、直接的には影響はなかった。

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