シリア内戦の終結に向けて様々な布石が打たれている。

シリア内戦の原因というよりは「結果」の一つと言っていい「イスラーム国」については多くが報じられる。特に、「イスラーム国」が拠点としてきたシリアのラッカとイラクのモースルでの、対「イスラーム国」の掃討作戦に関心が集まる。しかしこの2つの拠点の争奪をめぐる報道は、「イスラーム国」の劣勢を印象付けて義勇兵の流入を減らすための情報戦の一面もあり、額面通りには受け止められない。

むしろ、ここのところの動きで重要なのは、3月19日に、シリア北部、アレッポの北西方面に位置するアフリーンのクルド人勢力YPGとロシアが合意して、ロシア軍の部隊をこの地域に導入しようとしているという報道だ。

"U.S.-allied Kurd militia says struck Syria base deal with Russia," Reuters, March 20, 2017.

シリアのクルド人勢力YPGは、シリア北東部のクルド人が多数住むコバネやジャジーラで米軍と協力し、支配地域を広げてきた。北東部のコバネとジャジーラを中心とした支配領域を、アフリーンの支配領域と繋げると、シリア北部にトルコとの間に「クルド回廊」のようなものができ、クルド人の自治・独立への道に大きな一歩となるとともに、トルコを封じ込めるような形になる。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。