米国による、中東諸国の空港からの米国直行便への電子機器機内持ち込み禁止措置に、英国は即座に追随したが、しかし措置の対象となる国や航空会社にズレがあることをこの欄で記しておいた。

ここで興味深いのは、英国が措置の対象にペルシア湾岸の3カ国(UAE、カタール、クウェート)を入れていないことである。そこから、グローバル展開が著しい3社(UAEのエミレーツとエティハド、カタールのカタール航空)が、英国の措置では対象にならない。治安が安定してテロがほとんど起きないこれらの3社を措置の対象に入れているがゆえに、米国の措置の裏に米系航空会社のロビイングがあるのではないかという観測が出てくるのだが、逆に、英国はこれら3社のネットワークが運ぶ人の流れを、英国に呼び込もうとしているようにも見える。

英国はかつて保護国だったペルシア湾岸の産油国を、ここで規制の対象から除外して、米国寄りになっていたそれらの国を再び引きつけようとしている、という憶測も可能かもしれない。

これに限らず、より一般的に、英国は、トランプ政権下の米国が中東との人的交流に障壁を築く政策を次々に打ち出すのに対して、表面上は異議を唱えず追随もしつつ、米国が引き寄せていた人材や投資、情報や機会を英国に呼び込もうとしていくのではないか、と漠然と私は予測している。グローバルな政治経済の中で英語圏の強みは今後も残るだろうが、こと中東に関することに限り、米国はアクセスが難しい国となる。そうなると、英国が人的交流の場としての米国の地位を、幾分か引き継ぐ(奪う)のではないだろうか。米英の密接な関係から、全体として中東と米国の関係は維持されるが、そこに不可欠の機能として、英国の役割が増すのかもしれない。

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