シャンゼリゼの銃撃事件の犯人の身元判明

執筆者:池内恵2017年4月21日

4月20日に起きたパリ・シャンゼリゼの警官襲撃で、射殺された犯人の身元が公開された。カリーム・シュルフィー(Karim Cheurfi)、39歳でフランス国籍、パリの東の郊外セーヌ・エ・マルヌ県のシェルの家族宅が捜索の対象となっている。名前からしてアルジェリアなどのマグリブ系移民の背景があると思われる。2001年にも警官襲撃で有罪判決を受けている。一昨年以降、「イスラーム国」関係者と連絡を取るなど、過激化の兆候を当局に把握されていたようだ。

「イスラーム国」に近いアゥマーク通信は、今回は事件から数時間後に犯行声明を出したが、実行犯の名前をAbu Yussef al-Beljiki(ベルギー人アブー・ユースフ)と呼んでいる。これは作戦名あるいはジハード戦士としての名前であるから、本名と異なること自体はおかしくはないが、当局が後に発表したフランス国籍の犯人を、アゥマーク通信が「ベルギー人」としていることは、何を意味するのか。直接の関係が乏しい事件に、メディア報道を元に、当てずっぽうで犯行声明を出していることを示すのかもしれない。

しかし「イスラーム国」の関与が疑わしいからといってこれがテロではないとか、ジハード思想と関係ない、ということではない。その逆であり、直接組織的つながりのない人間同士が「ジハード」を共通認識として同様の行動を起こし、社会もそのように認識することが、グローバル・ジハードのテロの基本である。この事件は、典型的なグローバル・ジハードの事象と言えるだろう。

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