【ジブチ紀行】遠回りしているが、やっと今回の渡航の一つの主要目的、アフリカ大陸初の電化鉄道とされるジブチ−アジスアベバ鉄道の話である。ジブチ市とエチオピア・アジスアベバを12時間(諸説あるが)でつなぐというこの鉄道は、中国の借款と中国企業の進出で大々的に建設が進められてきた。実は、既に開通したことになっている。昨年10月5日にエチオピア・アジスアベバ側で開通式が行われ、今年1月10日にはジブチ側で「完成」式典が行われた。来賓を招いた試運転・試乗の映像が流れ、中国主導のアフリカ開発の事例として注目を集めている。

3月にも旅客を乗せた本運転・営業が始まるとの報道があったので期待していたのだが、実際に3月末から4月初頭にかけての今回の滞在中には、とてもすぐに客を乗せて走る様子はなかった。

 
 
 

ジブチ側のターミナル駅はナガド駅。ジブチ市の南西方面の土漠・砂漠の中を車を走らせると、忽然と駅舎が現れる。駅舎の完成記念の垂れ幕も、中国語ばかりが目立つ。「完成」「開通」は中国国内向けで、現地政府や、そしてなによりも乗客のことは後回しという感じである。そもそも潜在的な「乗客」はいるのだろうか。小国ジブチの90万人弱の人口のうち、多くは1日1ドル程度の収入の絶対貧困層である。エチオピアに旅行で行くとは考え難い。外から客を呼び込むには、ジブチ国際空港の設備はあまりに貧弱である。そもそも街中から鉄道の中央駅に至るインフラが十分ではない。現地にニーズが乏しいというだけでなく、中国企業による進出は地元に雇用を産まない、という不平も、街中で聞いて見ると漏れ伝わってきた。

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