先ほどのトルコとシリアの壁の話の流れで、もう一つ、建築雑誌のウェブサイトをなんとなく逍遙していたところ、目に留まった記事がある。

"Humanitarian experts propose turning refugee camps into enterprise zones called "refugee cities,"" Dezeen, 9 December 2016. 

難民キャンプを、ホスト国の政府や国際援助による支援に依存した一時的な存在とするのではなく、「難民都市」として、ある種の自立した経済主体として認めて、自活させるようにしたらどうか、という提案である。そのような提案を掲げて活動している団体があるという。

確かに、このような発想で考えてみることも、重要かもしれない。

世界各地の紛争、貧困、環境変動、政治的迫害などによって発生する難民・移民の数は増えるばかりであり、問題の規模は大きくなる一方である。これまでの枠組みによる対処では解決できそうもないことが明白になっている。

世界は主権国家に分かたれていて、あらゆる人がいずれかの国家の国籍を有していて、難民として出てきた場合は、難民キャンプのような一時的な居住施設に入り、紛争が収まれば帰国する、人道的見地から難民キャンプを出て異国で就労することを条件付きで一時的に許可したり、人道主義から手を差し伸べた第三国に移住・定住させることもあるが、原則は一時的な難民キャンプと祖国との間に難民を止めるという施策には限界がきているのではないかとも思う。

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