フランス大統領選「ルペン」はいかに敗れたか

執筆者:広岡裕児2017年5月10日
5月1日のルペンの集会は熱気に包まれていたが……(筆者撮影)

 

 エマニュエル・マクロンが大統領に当選した。マリーヌ・ルペンは崖っぷちに立った。

 マクロンの勝利は、25万人の草の根の運動員と自由・平等・博愛(連帯)・ライシテ(非宗教性・諸文化の尊重・反コミュノタリズム)といった「共和国の価値」への危機感に負うところが大きい。とくに後者については、マリーヌ・ルペンは自分こそがその防壁だと主張していたが、国民は「共和国の価値」を歪曲して利用した詭弁にすぎないと否定したのである。

 また、34%という得票率も、極右政党「国民戦線」(FN)の限界を示した。前回、2012年の大統領選挙で、ルペンは世論調査では15~16%の支持だったが、実際の得票率は17.9%だった。当時FNを支持すると公言するのは憚られたのである。ところが、今回は第1回投票、決選とも世論調査を下回った。

 いまやFNは市民権を得たといえる。だが別の見方をすれば、もはや「隠れルペン」には期待できないということである。小選挙区2回投票制の選挙制度を考慮すると、6月の総選挙で国民議会での議員団を形成できる15名を獲得できるかどうかは厳しい。

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