「イスラーム国」やアル=カーイダなどイスラーム主義諸組織が戦いに出たり統治を行う時に掲げる黒旗の中央に、丸い印章があしらってある。

この印章の由来や意味については、以前に個人のブログで解説したことがある。

預言者ムハンマドが、アラビア半島のメディナを拠点にメッカなどヒジャーズ地方で多神教徒やユダヤ教徒・キリスト教徒の諸部族の制圧を進めつつ、アラビア半島の外のビザンツ、ペルシア、エチオピア、あるいはバーレーンやオマーン、ヒムヤル(イエメン)などの支配者に使者を送り、帰順を呼びかけた。もちろんその場では無視されたが、ムハンマド死後に、ムハンマドに従った教友たちがジハードでこれらの国々を征服していった。

ムハンマドの手紙とされる文書がいくつか残っており、そのうちいくつかには、末尾にムハンマドのものとされる印章が押されている。黒字に白抜きで三行、上から「アッラー 使徒 ムハンマド」と書かれている。ムハンマドは文盲であったため、誰かが文字を書いて、最後にムハンマドが印章を押した、という体裁になっている。

サウジアラビア資本でサウジ政府の立場や見方を反映することの多い国際衛星放送局アル=アラビーヤのウェブサイトに掲載された記事で、これらのムハンマドが送ったとされる手紙の写真が掲載されている。サウジアラビアのメディナやトルコのイスタンブルの博物館で、原本や写しが公開されており、頻繁に報じられるため、珍しいことではない。

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