先ほどは「イスラーム国」やアル=カーイダの掲げる黒旗とその中央にあしらわれた印章について記したが、中東諸国で盛り上がるラマダーン月の連続ドラマの一つには、この黒旗と印章が乱舞しそうだ。

ラマダーン月の夜明けから日没まで、ムスリムは断食を行う。日中は断食に耐え、日没後は盛大な宴を催して祝うのが習慣だが、ここに娯楽を添えるのが各テレビ局が競う連続ドラマだ。今年のラマダーンの断食は、5月27日の夜明けから6月24日まで行われる見込みだ。

ここにアラブ世界の最大規模のチャンネルであるMBCが「イスラーム国」をテーマにした連続ドラマを投入すると盛んに宣伝されている。MBCはアル=アラビーヤの母体となる総合チャンネルで、これもサウジ資本である。

MBCは今年のラマダーン・ドラマとして「黒いカラスたち(Black Crows; al-Gharabib al-Saud)」を放映すると、他に先駆けて発表している。

これはサウジやUAEなどアラブのスンナ派が支配的な国の政府による、PR作戦、言葉を変えればプロパガンダの一環としての性質が濃厚である。米ハリウッドと提携し、ドキュメンタリータッチで「イスラーム国」を描くことで、「イスラーム国」の巧みなメディア・プロパガンダに対抗しようとする意図があるようだが、なまじ情感を込めて描くと、かえって支持者が増えてしまわないか心配である。

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