民情首席秘書官に任命された曺国・ソウル大学法学専門大学院教授(右)。検察改革を担う (c)EPA=時事

 

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領の「改革」の意思を最も鮮明に示しているのが、司法改革だ。特に検察改革が注目を集めている。検察は、建前としては権力から独立した存在とされている。しかし、政権が力を持っている時期には政権の「刀」として活用され、政権がレームダックを迎える時期になると、検察は自己保全のために次期政権をにらみながらレームダック政権に捜査の手を伸ばす、というのがこれまでの実態だった。

民情首席秘書官に「進歩派知識人」

 驚きの人事は、青瓦台の「民情首席秘書官」への曺国(チョ・グク)ソウル大学法学専門大学院教授(52)の起用だった。民情首席秘書官は検察のチェック、大統領周辺や高級公務員の不正腐敗管理などを担当するが、歴代政権では、民情首席秘書官はほとんど検事経験者から起用されてきた。

 曺国教授は国家保安法の撤廃などを主張してきた、韓国では誰もが認める「進歩派知識人」だ。1986年にソウル大学を卒業、1992年から1993年に蔚山大法学科専任講師、助教授を務めるが、1993年に南韓社会主義労働者連盟(社労盟)傘下の「南韓社会主義科学院」事件に関連して、国家保安法違反容疑で約5カ月間拘束され、懲役2年6月、執行猶予3年の判決を受けた。アムネスティから「良心の囚人」の指定も受けた。1987年1月に公安当局から水拷問を受けて死亡したソウル大生、朴鍾哲(パク・ジョンチョル)君と高校が同窓だった。87年の民主化運動の起爆剤となった朴鍾哲君拷問致死事件に衝撃を受け、「良心と思想の自由」を研究し、1992年に著書『思想と自由』を出版し、当時は主張することが困難だった国家保安法撤廃を主張した。

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