第二次土地バブルの「底抜け」を覚悟すべし

執筆者:大神田貴文2008年6月号

バブルを演出してきた不動産ファンドが変調をきたしている。「限られた物件」ばかりが高騰している背後では――。「そう言えば最近は来ないわねえ」 東京駅前の喫茶店で、高齢の女性店主が首を傾げた。築四十年は経つ建物の一階が店舗で、二階にはすっかり耳の遠くなった夫と飼い猫がくつろぐ。三年前は相次ぐ立ち退き要請に不愉快な思いをさせられたものだが、今では「招かれざる客」の来訪はなくなり、落ち着いた日々が戻ってきた。 大都市の一等地から地方の大都市に波及した不動産価格の高騰はどうやら天井を打った。平成初頭の「第一次不動産バブル」に続き、世紀が変わってからうまれた「第二次バブル」のメッキがいま剥げかけている。 国土交通省が三月下旬に発表した今年一月の公示地価は、全国平均で前年比一・七%アップ。「大都市」「商業地」の値上がりが目立ち、東京の商業地に限れば一六%近く急騰した。これは投資ファンドが魚市場のセリさながら「限られた物件」を奪い合った結果。地方の大都市ばかりか東京の近郊でも地価の下落が始まり、それが都心の「限られた物件」への投資を加速させ、同業者さえ首を傾げる高額購入が続いているのだ。それはまるで線香花火の最後の一閃のようにもみえる。

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