政治と国民と軍隊

執筆者:冨澤暉2017年6月3日
1967年、アメリカに徴兵制があったベトナム戦争時のアメリカで、兵役を拒否したプロボクシング世界ヘビー級王者のカシアス・クレイ(モハメド・アリ)(c)AFP=時事

 

 前回の主題は「独裁と統率と文民統制」であった。記述当初、その主題の前に「民主制度下における」という前提をつけようかと思ったのだが、それは止めた。

 金正恩(キム・ジョンウン)最高指導者が統治する「北朝鮮」の国名は「朝鮮民主主義人民共和国」であり、エリザベス女王を元首に頂く立憲君主国・英国は諸外国のような憲法を持たないにもかかわらず、民主的諸制度発祥の国とされている。自らを非民主的国家だと主張する国が殆どないのなら、「民主制度下の」という前提は無意味だと考えたためである。

民主主義とは何か

 我々が気楽に使用する「民主主義」という言葉の意味が各国によって様々だ、ということになると、国際問題についての議論も難しくなる。

「日・米・韓は、民主主義・自由主義といった同じ価値観を共有する友好国」とか「民主主義国家同士は戦わない」などと本当に言えるのだろうか。民主主義が悪いとは言わないが、その言葉の表すものの実態と限界は、互いに承知しておく必要がある。

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