GCC内部で異様なまでの泥仕合

執筆者:池内恵2017年6月4日

ここのところ、ペルシア湾岸のアラブ産油国が集まるGCC諸国の間での不和と非難合戦が、前例のない域に達している。

渦中におり槍玉に上がっているのがカタールである。5月23日にタミーム首長が軍事教練過程の卒業生に向けた発言で、イランに大幅に歩み寄り、GCCによるイラン敵視姿勢を批判する発言を行なったとカタール国営通信が報じた。さらにサウジ・エジプト・クウェート・バハレーン・UAEから大使を引き上げるという驚愕の措置が発表された。カタールは即日にこれらの報道をハッキングによるものとして否定したものの、5月27日にはタミーム首長がイランのロウハーニー大統領との電話会談で両国の接近を提案したという報道も流れた

これに対してGCC諸国、特にUAEとサウジは、傘下のメディアを通じて、カタールをあたかも戦争中の敵国であるかのようにこき下ろす報道を続けさせている。主要な論点は、カタールがムスリム同胞団から「イスラーム国」までのあらゆるイスラーム過激派を支援してきた、というものだ。カタールによる対外支援が、エジプトの政権と対立するムスリム同胞団や、シリアやリビアのイスラーム主義系の過激な組織に渡っているという疑惑はこれまでもかけられてきたが、GCC諸国がこれまでは問題視することはあまりなかった。

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