サウジ・UAEとカタールの間の泥仕合は、発端のタミーム首長発言にしてもハッキング説が対置され、UAEやバハレーンの高官のメールやSNSアカウントも次々にハッキングされるなど、基礎的な情報が事実か否かすらも、判定することが困難である。不可解なことが多すぎる。

トランプが個人的にサウジ側に立ってツイートで参戦、そこにFBIがロシアによるハッキング疑惑をリークして体面を失わせるなど、若干「お笑い」に近くなっているところもある。

情報に煙がかかって真実が見通せない。

しかし「火のないところに煙は立たない」。何か重要な動きが背後で進んでいるのだろう。そこから立ち上る煙や、隠そうとする煙幕の奥を見つめていなければならない。

また、嘘や歪曲にまみれた情報の渦の中からも、真実らしきものは見えてくる。「嘘から出た実」である。カタールのイラン接近姿勢はあるのだろうし、カタールが支援している各国の勢力の中には、サウジなどが「過激派」とみなしている勢力もあるだろう。同時に、過激派支援といえばサウジの方がもっと責任が重いのでは、という声はかえって強くなるかもしれない。タミーム首長が実際に発言したか否かに関わらず、サウジ主導のイラン・シーア派敵視政策には限界があり、カタールがイラン接近を画策しているにせよいないにせよ、この事件はカタールをイランの軌道に近づけるか、少なくともGCCの弱体化により一層イランの台頭に拍車をかけるだろう。サウジのカタール非難は断末魔の叫び、あるいは自己実現的予言に近い。

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