6月7日のテヘランのテロとの関連は今のところまったく報道に出てきていないが、取り締まりの過程で紛争が激化する可能性があるので注意が必要なのは、イラン西部のフーゼスターン州・アフワーズ(Ahvaz; Ahwaz)である。

この地域はイランの石油・天然ガスの多くを産出する地帯だが、住民は歴史的にアラブ人が多く、分離主義運動のアフワーズ解放アラブ闘争運動(Arab Struggle Movement for the Liberation of Ahwaz:ASMLA)がしばしば蜂起し、陰でサウジが支援しているとされる。

今回のテロが「イスラーム国」であれ別の組織であれ、イラン人をリクルートできたとは思えないのである。そうなると、フーゼスターンのアラブ分離主義運動の分派がイスラーム化した、といった説明は受け入れられやすい。事実かどうかはともかくとして、信憑性が現地や中東地域の文脈では高く見えるということである。

サウジはアル・アラビーヤなどのメディアを通じて、しきりにこのアフワーズでのアラブ系住民への差別や抑圧、アラブ人比率を低めるための移住政策(エスニック・クレンジング)、環境破壊インフラ整備の立ち遅れ、分離主義運動の盛り上がりと弾圧・処刑の非人道性を論じている。これをイランは捏造・内政干渉と一蹴する。

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