「パナマ断交」中国の真の狙いは何か

執筆者:野嶋剛2017年6月16日
6月13日、北京で共同記者会見に臨み、文書を交わすパナマのサインマロ副大統領兼外相(左)と中国の王毅外相 (c)EPA=時事

 

 中米のパナマが中国と国交を樹立して台湾と断交したというニュースについて、「蔡英文政権のもとで中台関係が緊張し、中国が台湾の友好国を切り崩していくなかで、今後、断交のドミノ現象が起きていく恐れがある」という分析がなされている。

 確かに蔡英文政権にとってはショックだろう。パナマは小さいとはいえ、パナマ運河という世界レベルの海上交通の要衝を持つ。また台湾とは、清朝時代に結んだ外交関係が中華民国に引き継がれた歴史もある。台湾が国連を脱退した1971年も、パナマは中華人民共和国ではなく、中華民国の立場を擁護したほどの、伝統的友好国だったのだ。

 蔡英文総統は就任後の昨年6月に同国を訪問するなど、台湾としても関係維持に注力してきただけに、政権の受けた衝撃は小さくない。蔡英文総統の会見をテレビで見たが、その表情はかつてなく厳粛で焦燥し、事態の深刻さがうかがわれるとともに、おそらく就任後最も厳しい言辞で中国を批判していた。

 しかし、台湾の一般市民の受け止め方は落ち着いており、それほどのショックはないように思える。それにはいくつかの理由がある。

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