サウジの新皇太子擁立は、6月21日早朝にサウジ国営通信社(Saudi Press Agency; Wakala al-Anba' al-Saudiyya)から矢継ぎ早に配信された、16本の勅令によって明らかになった。第255号第270号の16本の勅令は、全体としてみれば、前皇太子の解任と新皇太子の任命に始まり、初代国王アブドルアジーズの孫の世代(第三世代)で初の国王として、現国王の実子のムハンマド・ビン・サルマーンが就任することを確実にした上で、その同世代の側近たちに、内相(前皇太子が務めていた)とその副官・顧問といった内務省高官ポストを、そして新皇太子がいっそう前面に出て取り仕切ることになる王宮府に、新皇太子の側近と目される同年代の第三世代・第四世代王子たちを任命するものだった。

つまり新皇太子に率いられた30歳前後の王子たち(の特定の派閥)に、軍事・警察・経済政策、そして国王の名代で行われる外交までの権限を集中させる効果を持つ。

しかし、第三世代の王子の中でも年少のムハンマド・ビン・サルマーン皇太子に権限を集中させれば、国王就任後も含めて極めて長期間に渡って権力の座に就くことが確実となる。そして、さらに直系の子息に権力を世襲して行くことになれば、恒久的にサルマーン現国王の家系が国王の地位を継承し、サウド家の中の他の有力家系を権力から遠ざけることになる。そこまでの合意がなされているかどうかは定かではない。おそらくそのような合意を強いれば反発も大きいだろう。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。