29連勝を達成し、感想戦で増田康宏四段(左)と対局を振り返る藤井聡太四段(右) (C)時事

 

 前人未到の29連勝を達成した藤井聡太四段(14)。新記録樹立の相手に不足はなかった。昨年の新人王戦を制した増田康宏四段(19)だ。過去に新人王に輝いたのは羽生善治三冠(1988年)、渡辺明竜王(2005年)、佐藤天彦名人(2008年、2011年)、一昨年度のNHK杯を制した村山慈明七段(2007年)など錚々たる顔触れが並ぶ。ちなみに増田の師匠でありながら、藤井と増田の対局にレベルが高すぎて理解が追いつかないと謙遜してみせた森下卓九段も、新人王経験者だ(1990年)。

 対局後に師匠森下が語ったように、増田側に形勢を一気に損ねるような悪手がなかったどころか、ミスらしいミスさえなかった。にもかかわらず、最終的には圧勝した藤井。中盤までは増田有利との声も聞かれた中で藤井が勝負を呼び込むことができたのは、プロにも盲点の一手だった。そしてそれを後押ししたのがAI(人工知能)だった。

「AI」で弱点を克服

 そもそも当初、藤井将棋の代名詞といえば、詰将棋で鍛え上げられた終盤力だった。プロも多数参加する詰将棋解答選手権で、史上初めて小学生で優勝。今年3月には3連覇を達成している。いうまでもなく、将棋は王将を先に詰めば勝ちというゲームだ。その詰みの手筋を誰よりも早く発見する能力に長けているということは、勝負の上で大きく有利である。

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