「脅威対抗防衛力」と「基盤的防衛力」

執筆者:冨澤暉2017年7月1日
昨年10月に行われた、自衛隊記念日観閲式(陸上自衛隊HPより引用)

 

 1976(昭和51)年から2004(平成16)年までの28年間、日本の防衛力は「基盤的防衛力構想」に基づいて構築されてきた。しかし、ミサイル防衛を導入した「16大綱」(平成17年度以降に係る防衛計画の大綱)では「基盤的防衛力構想の有効な部分は継承しつつ」という文言が残ってはいたものの、脅威対抗防衛力への変換が行われ、6年後の「22大綱」では「基盤的防衛力」という言葉は完全に消えてしまった。さらに「25大綱」以降の現代では、一般国民はもとより現職自衛官・退職自衛官同士の会話においてすら、この言葉を使う者がいなくなった。

 実は筆者は、2008(平成20)年春頃からこの傾向に疑問を持ち、その年の秋には「基盤的防衛力再考」という小論文を自衛隊OBの会(隊友会)の機関誌『隊友』に掲載したのだが、自衛隊内外からの反応は冷ややかであった。

 あれから9年、現在の筆者は「北朝鮮には脅威対抗防衛力で、中・露・米・韓には基盤的防衛力で対応すべき」と考えている。その所以を以下に述べたい。

軍人が好む「脅威対抗論」

「脅威対抗論」とは本来、軍事運用計画(戦略計画を含む)のためのものであって、軍事力整備のためのものではない。

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